◆ 栄養学から見た菜食メニュー
大阪信愛女学院短期大学教授 渡部由美
菜食をするにあたり、どのような食品をどれだけ摂ればよいのでしょうか。肉や魚を食べ ないわけでありますから、そこから摂る栄養素を他の食品で置き換えれば問題ありません。タンパク質を多く含む大豆製品をうまく献立に組み込めばいいわけで す。肉・魚100gのタンパク質量は木綿豆腐1/2丁、凍り豆腐1個、がんもどき1個、ゆで大豆カップ1/2を2種類組み合わせた量になります。また、質 的にも十分整います。
ベジタリアンは野菜を多く摂っているので、ビタミンやミネラルが不足することはありません。野菜や豆類などの植物性食品には、ガン予防に効果がある成分 を含むものが多く、反対に肉食からくる動物性脂肪の摂りすぎは、動脈硬化やガンの死亡率を上げます。特に、乳ガンや大腸ガンは脂肪と関係が深いと言われて います。
日本人の脂肪摂取量は年々増え、平成6年で平均58g。推奨値は、エネルギーの 20~50%を脂肪で摂るということで、2000カロリーの人で45~55gですから、摂りすぎの人がかなりいます。また、脂肪を構成している脂肪酸の種 類のバランスが大切であるといわれています。動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸は、血中コレステロール濃度を上昇させるものが多くあります。反対に植物 性脂肪に多く含まれるリノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸は血中コレステロール濃度を低下させる働きがあります。
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)はいずれも魚介類の脂肪酸で、心筋梗塞、動脈硬化などを予防することが明らかにされてい ます。 DHAには記憶学習調節能や抗腫瘍効果もあります。ところが、リノール酸とリノレン酸やEPA、DHAのバランスが大切で、リノール酸の摂りすぎは、身体 の免疫能を抑えて、ガン細胞の増殖を助けることがわかってきました。ですからリノール酸過剰は、コレステロールを下げてくれますが、発ガンを促進させま す。そこで魚を食べないベジタリアンはどうか。私どもの調査によると、リノール酸を摂りすぎる傾向があるので、植物油脂を使う場合に工夫がいると思いま す。リノール酸の多い油は避けたほうがよいでしょう。
食品というのは、単独成分でできているわけではありません。ある成分が何かの疾病予防に効果があるとわかったら、その価値だけで、私たちは動かされてし まいます。できるだけ偏りなく、色々な食品を摂ること。そして過剰は避けることです。自分の食生活を振り返ってみて、栄養的にバランスがとれているか考え てみてください。健康を考えた食事、食べ方を意識しましょう。
ベジタリアン・ジャーナル No.9 P2 (1997)より